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「信じる事」それが中国大陸流 - 中国の消費者に届けるために必要なこと

取材特集 ウィングファットインターナショナル 代表取締役 中込直樹

自社の商品を中国で販売したいと考えている担当者であれば、「独身の日」というキーワードを聞いたことがあるだろう。中国では、数字の1が並んだ11月11日を独り身の意味を込めて「独身の日」と呼び、数年前からネット通販各社が値引きキャンペーンやセール競争を繰り広げる一大イベントとなっている。

2020年11月11日も毎年恒例の「独身の日」セールが行われ、EC最大手のアリババ集団の売上は4,982億元(約7兆9000億円)であったと発表された。規模の大きさを分かりやすくするために日本の最大手の楽天と比較してみると、楽天の2019年の国内EC流通総額(楽天市場、楽天トラベルなどの取扱高)が約4兆円弱なので、たった一日で楽天の年間取引金額の2倍近くになった計算になる。

そんな世界最大の消費市場への進出を目指す企業が、こぞって相談を持ち掛ける企業がある。中国に拠点を構えるウィングファットインターナショナル(永發國際創建有限公司)だ。

中国や東南アジアで販売したいメーカーからの依頼を受け、企画、デザイン、製造、プロモーション、販売、物流まで一手に手掛ける。山梨県出身の中込直樹氏が中国留学、商社勤務を経て2007年に中国で創業し、今や1,000名超の従業員を抱える。

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元々は高品質なプラスチック成型技術を武器に、ディズニーやポケモンなど大手玩具メーカーの商品を受注製造し、日本、米国に輸出するいわゆるOEM製造が中心だった。

製造から企画、プロモーション、販売まで

その後、様々な商品の製造を受託する中で、単なる受託製造だけではなく、商品のデザイン、企画段階から関わるようになっていく。 例えば、一世を風靡したペプシコーラのスターウォーズボトルキャップを覚えているだろうか。

500mlのペプシコーラを買うとに数十種類のおまけのどれかがもれなく付属しており、ガチャガチャ感覚で楽しめる仕組みだ。また、シールをめくって当たるスペシャルボトルキャップは、全てをコンプリートしたいマニアの間で高値で取引された。

当時、コカコーラに対して鮮烈なシェア獲得争いを仕掛けていたペプシコーラが大手広告代理店を起用して行ったこのキャンペーンは、爆発的にヒットして社会現象となった。

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当時、この製造を一手に引き受けていたのが同社の代表取締役、中込直樹氏だ。中国の大学に留学し、日系商社の中国駐在員としてそのまま就職すると、メキメキ頭角を表し、2007年に独立して現在の会社を設立した。 今では、20,000㎡(テニスコート約100個分)の広さを誇る工場で、年間数百アイテム、約3,000万個の商品を製造している。

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何もできないのがもどかしかった

中込氏が中国での販売、プロモーションを手掛け始めたのは2012年ごろからだ。それまで同社は様々なメーカーから製造受託を受け、多種多様な商品を世の中に供給してきたが、そのほとんどは日本やアメリカに出荷されていた。「中国で販売したい気持ちはあったものの、模造品の問題や販売権の問題もあり、簡単に開始できるものではなかった。」

実際に、商標登録や著作権の問題は完全に無くなっている訳ではない。代表的なものは”IPHONE”事件だ。iPhoneという商標登録についてはAppleが2006年に中国にて取得をしていた。しかし、中国のメーカーが2014年に革製品用に”IPHONE”という商標登録を取得していることが発覚する。Appleがこの商標登録を無効だと訴えたものの、中国当局はAppleの訴えを棄却し、中国メーカーの商標登録は現在でも有効なままだ。

そのようなリスクがある中でも、中国の中間富裕層の拡大と共に消費市場が拡大し続けており、日本の10倍の人口は魅力的で、日本企業にとって無視できないマーケットである。

彼らを信じること、当たり前を実行していく

中国で起業し事業を成功させてきた中込氏には信念がある。”彼らを信じること、彼らの当たり前を実直に実行していくこと”だ。 20年間現地に住んでいるからこそ彼らの当たり前の価値観が身についている。

一方、彼らの当たり前の価値観は日本では驚きを持って受け止められることがある。例えば、『起業したら、部下や取引先から、なぜかしつこく「高い車に乗ってください」と言われたときの話。』という彼らの当たり前を記事にしたところ、SNSを中心に広く拡散され、様々なコメントが寄せられた。

どの国や地域でも同様のことが言えるが、”どんな商品やサービスにどの程度のお金を払うのか”という相場観が無いと、その地域での販売戦略は上手く行かない。中込氏によると、「日本では、金遣いの荒い社長は周りから白い目で見られるかもしれないが、中国では社長が大衆車に乗っている会社は信用できないし、そんな会社で働きたくないと思われる。」

こんな話をすると、中国では高ければ高い程モノが売れると思われがちだが、それは違う。接待や仲間内に対してはお金を湯水のように支払うことを厭わないが、仲間の外では世間体は気にせず、百貨店でも値段交渉は欠かさない。お店の店員にどう思われようが、仲間内のメンツと外の世間体は異なる価値観なのだ。よって、中国では現場の販売員に値引きの権限が一定程度付与されており、顧客に応じて臨機応変に対応できるようにしているのが一般的である。

当たり前に実施するべき3点

中国消費者向けの販売戦略で重要なポイントを伺うと、最低限抑えるべき視点として3つにまとめてくれた。

1、プロモーション

商品ブランディングに置いて一番重要なポイントであるプロモーション。近年、テレビを見なくなりラジオを聞かなくなった若者に商品をローンチさせるにはSNS 上でのプロモーションが必須である。KOLと呼ばれるインフルエンサーを使い商品の販売促進を行う事がマストになってきている。

2、ディスカウント・セット売り

特に 11 月 11 日(独身の日)や各イベンドに置いてのディスカウントや商品をまとめて売る商法は中国消費者に有効的である。元々値引き文化の中で育った彼らに上代のまま買う事は損をさせた気分になってしまう。そこでイベントごとのディスカウントや Buy2 Free1 の様なセット商法を行う必要がある。

3、販売店へのインセンティブ

実店舗で販売するには、顧客受けが良いのは勿論だが、販売店へのリベートが非常に重要との事。販売計画の目標が達成した際に支払う販売店へのリベートは一般的である。

日本のモノ・コンテンツ・サービスを中国、東南アジアへ

現在は日本にも貿易、及び物流拠点を設立し、日本からの輸出もサポートしている。これにより、企画、デザイン、製造、プロモーション、販売、物流まで一気通過に対応することが可能となった。同社のように、コンサルティングだけではなく、実務面でもサポートできる会社はそこまで多くないだろう。

「当たり前のことを実直にやっていけば、必ず中国の消費者に届く。」 コロナで外国人観光客のインバウンド消費が見込めない中で、中国販売は一筋の光から大きな土台となるのか。中込氏の挑戦は続く。

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November 12, 2020


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